
文部科学省と厚生労働省の調査では、2026年3月卒業の大学生の4月1日時点の就職率は98.0%でした。
高い数字です。ただ、この98.0%を、学生一人ひとりの意思決定という視点からも見てみたいと思います。
第一志望の会社に決めた学生もいれば、複数の選択肢から悩んで決めた学生もいる。内定を得たものの、最後まで迷った学生もいるでしょう。
この数字から分かるのは、「就職した」という結果です。どのように企業を選び、何に迷い、何を決め手にしたのかまでは見えてきません。
就職できたかどうかと、本人が納得して進路を選べたかどうかは、分けて考える必要があります。
私は、就職活動では誰かが正解を渡すことより、学生自身が判断軸を持ち、自分で進路を選べることが大切だと考えています。
そのためには、「内定あり」という結果だけではなく、その学生がどのような状態にいるのかを見る必要があります。
第一志望で納得している
内定はあるが、他社と迷っている
条件は良いが、仕事内容に不安がある
周囲から勧められて承諾しようとしている
内定はあるが、本当に就職するか迷っている
同じ「内定あり」でも、学生が次に考えるべきことは違います。
仕事内容をもう一度確認した方がよい学生もいれば、社員と話して職場の雰囲気を確かめたい学生もいる。給与や勤務地などの条件を整理した方がよい学生もいれば、「自分は何を大切にして会社を選ぶのか」まで戻って考えた方がよい学生もいます。
「内定あり」という結果だけでは、その学生が納得して進路を選べる状態にあるかまでは分かりません。
売り手市場では、企業は応募者数や内定辞退率に目を向けます。
ただ、「内定を承諾してくれた」ことと、「納得して自社を選んだ」ことは同じではありません。
給与や勤務地だけでなく、どのような仕事をするのか。誰と働くのか。入社後に何を期待されるのか。仕事の大変さは何か。
学生が自分で判断するための材料を、企業側が十分に渡せているかを確認する必要があります。
私は、選考を企業が学生を見極めるだけの場ではなく、双方が納得して決めるための過程だと捉えています。
学生に判断するための材料を渡し、企業もその学生を知る。内定を出した後も、この過程は続きます。
就職率や内定承諾率などの結果を確認したら、その次に一人ひとりの状況を三つの視点で見てみます。
内定や進路が決まっているか。
なぜその会社、その仕事を選ぼうとしているのか。
良い面だけでなく、不安や迷いも含めて、自分で選んだ理由を説明できるか。
就職率が高いことは、良いニュースです。
ただ、その数字だけで、学生一人ひとりが納得して進路を選べたかまでは分かりません。
大学のキャリア支援でも企業の採用活動でも、学生が自分の判断軸を持ち、必要な情報を得たうえで、自分で進路を選べる状態をつくることが大切です。
選考中や内定後の学生に、一つ聞いてみてください。
「今、会社を選ぶうえで大切にしていることと、まだ迷っていることは何ですか」
その答えに対して、学生が判断するための材料を企業として渡せているでしょうか。
内定承諾を急がせる前に、学生が自分で選ぶために足りない情報を一つ渡す。そこから始めてみてください。