
「生成AIがあるから、若手もすぐに仕事ができるようになる。」
そうした期待を耳にすることが増えた。実際、文章の下書きや情報整理は早くなる。
ただ、入社したばかりの社員がAIへ質問し、もっともらしい答えを受け取っても、それが自社の仕事に合っているか判断できない場面がある。
AIを仕事で使うには、ツールの使い方より先に、仕事を判断するための前提が必要である。
・この会社では、どのような価値観や基準で判断するのか
・過去に似た案件で、何を選び、なぜそうしたのか
・顧客との約束や、避けるべき対応は何か
・迷ったときに、誰へ質問すればよいか
経験のある社員は、こうした前提を頭の中に持っている。そのため、AIへの質問を具体的にでき、出てきた答えの違和感にも気づける。
若手には、まだその蓄積がない。
そこで「AIで調べて進めて」とだけ伝えると、速く答えを出せても、判断を誤る可能性がある。
若手が判断できないのは当然である。これは若手のAI能力だけの問題ではない。会社が、仕事の前提と過去の判断を渡せているかという問題でもある。
必要なのは、AIツールの使い方研修だけではない。
・過去の事例と、当時の判断理由を読める場所
・仕事で守るべき基準をまとめた資料
・質問してよい相手と時間
・AIの回答を先輩と見直す機会
まずは若手に任せている仕事を一つ選び、「この仕事で良い判断をするために、先輩だけが知っていること」を3つ書き出してみてほしい。
その暗黙知を言葉にして渡すことが、AIを仕事で使う準備になる。
AI時代に価値を持つのは、新しい知識だけではない。社内にある判断の前提を、次の世代へ引き継いでいくことである。